イタリアのヴェネツィアで毎年1月下旬から2月上旬の四旬節前に、人々が仮面を着用して行われる華やかな祭りです。
起源
カーニバルの起源は11世紀頃に遡り、
アクイレイアの総大司教との抗争に
ヴェネツィアが勝利した1162年であると言われています。
1296年にヴェネツィア共和国が
公式に祝日と認定しました。
キリスト教のレント(四旬節)の前に贅沢を
楽しむ期間として発展していきます。
現代でも人々は、
相手や環境に応じて見えない仮面を
被らざるを得ない方もいる事でしょう。
あなたは「立場や環境を超えて行動をしたい。」
その様な衝動に駆られる事はありませんか?
ヴェネツィアの人々は物理的に仮面を被る事によって、羽を伸ばしていたのかもしれません。
当時は地位により着用する服や振る舞い、
話しかけられる相手などが制限されていた為、
貴族も庶民も仮面をつけて身分を
隠しながら自由にカーニバルを楽しんだとされています。
そして、日常的に仮面を着用して淫らな場所に
出入りしていた市民に対し、
カーニバル前後のみに仮面の着用が制限されました。
仮面を着用してのギャンブルや聖堂への
立ち入りも禁止されました。
18世紀にはカーニバルは最盛期を迎えますが、
ナポレオンがヴェネツィアを征服した1797年に
仮面の着用はさらに厳しく制限されてゆきます。
治安上の理由や反乱防止など様々な懸念点を考慮し、
私的な場や一部の舞踏会を除いて仮面の着用が厳禁となります。
同時にヴェネツィアでのカーニバル自体も
厳禁とされてゆきます。
それから1979年に遂に復活し、その後国際的なイベントとなっています。
カーニバルの期間中は、仮面舞踏会やパレード、
演劇、コンサートなどが市内各地で開催されています。
代表的な四つの仮面の形状や背景
仮面の種類には主に、「コロンビーナ(Colombina)」「バウタ(Bauta)」「ヴォルテ(Volto)」「ドットーレ・デラ・ペスト(Dottore della Peste)」などがあります。
あなたならどの様な仮面を被りたいでしょうか?
コロンビーナ
目元だけを覆うハーフマスクで、
丁度アイマスクのような形状になっています。
女性向けとして特に人気があり、
華やかな装飾が施される事が多く、
エレガントで華やかなデザインが特徴です。
顔に固定する為に棒で手に持つタイプや、
紐で結ぶタイプがあります。
コロンビーナのルーツは、
イタリアの即興喜劇「コメディア・デラルテ」に登場する、
機知に富んだ女性キャラクター「コロンビーナ」に由来しているとも言われています。
バウタ
四角い輪郭で、
顎の部分が前方に突き出た独特の形状をしています。
口元が覆われていますが、話しやすく飲食も可能です。通常は 白い色の装飾のないシンプルな仮面を用い、
三角帽子とマントを合わせて着用するのが
伝統的なスタイルとも言われています。
時代によっては、バウタは貴族・庶民を問わず使われ、カーニバルの時期以外でも許可されていました。
身分や性別を隠し、自由に行動するのにも重宝し、
政治的な密談や恋愛、ギャンブルなどにも
使われていたとも言われています。
物乞いをする時の「バルナボッティ」と
呼ばれる貧しい貴族達にも着用の義務がありました。
ヴォルテ
「バウタ」と同様に、
基本的には白いシンプルな仮面ですが、
フルフェイスの形状の為、飲食はしにくく、
表情が判別できず、素生が分かりにくくなります。
貴族たちは時折「ヴォルテ」を被りお忍びで、
庶民の空間へ紛れ込んでいたかもしれません。
ドットーレ・デラ・ペスト
長いくちばし、丸い目の穴の仮面で、
黒いローブやマント、手袋、杖とセットで着用することが多いです。
元々はペスト(黒死病)の医師が使用していた
防護具が起源とされています。
ペストにあたる医師が使用している場合は、
くちばし部分には香草や香水、
スパイスなどが詰められ、瘴気を防ぐと信じられていました。
ペストが大流行していた時代、
この仮面をつけた者が現れると、
「死が近い」という恐怖を招いたと言われています。
「ドットーレ・デラ・ペスト」を着用する意図は、
おどろおどろしさや
ミステリアスな雰囲気を醸し出す為、
もしくは逆に「死や病への皮肉」
「過去の暗い歴史を笑い飛ばす」という
意味合いで用いられていたのかもしれません。