中世ヨーロッパを代表する剣術にはドイツ流、イタリア流、イギリス流と様々なスタイルがありますが、当時最強と各国に一目を置かれていたいた剣術で外せないものにスペイン流があります。スペイン流は他の国の剣術と比べても独特です。そこでスペイン流剣術に関して紐解いていきましょう。
スペイン流剣術は賛否両論
剣術家の間ではスペイン流剣術は、珍妙な机上論のようなイメージを持たれ易かったため偏見や誤解を招き易かったです。スペイン流剣術は傍から見れば奇妙な図形を元に数学的で敷居の高いロジックを用いた武術という印象を受けやすいです。しかし一方ではスペイン流剣術を深く理解した人々の間では最強の剣術ではないかと騒がれていました。その評価はスペイン本国だけではなく、他国にまで至ります。
スペイン流剣術とは
まずはスペイン流剣術のどのように生まれたかの関して述べていきます。またスペイン流剣術は他国の剣術と比較すると短時間で習得出来ると言われているそうです。そこでスペイン流剣術はどうして早く習得出来るのか、また大まかなスタイルの特徴に関して見ていきましょう。
スペイン流剣術はどのようにして生まれたか
出展:AI画伯を使用した自身の画像より引用
スペイン流剣術はイタリア剣術家のCamillo Agrippa(カミーリョ・アグリッパ)の影響を強く受けていたと言われます。Camillo Agrippa(カミーリョ・アグリッパ)自体の剣術も数学的で幾何学を元にした分析に重きを置いていました。始祖はJerónimo Sánchez de Carranza(ヘロニモ・サンチェス・デ・カランサ)になり、こちらに詳しい記事がありますので関心のある方はこちらをご覧ください。
スペイン流剣術の習得の仕方は独特
特にスペイン流剣術が優れている点は短期間に習得出来る点です。習得に際して最初に、幾何学をベースにして剣術の原理原則を学ばなくてはなりません。他の武術のように型稽古を反復することで、その背景にある原理を感覚的に身に着けていく形ではないです。最初に科学的なロジックを学ぶという理論を先行させたアプローチで習得していくため、短期間で済むと言われています。
ただスペイン流剣術はそのようなアプローチに適した武術であるため短期間習得の実現が可能言えます。では実際にスペイン流剣術とはどのような動きをする剣術なのかに関して見ていきましょう。
スペイン流剣術の戦い方
スペイン流剣術では計算された円運動のフットワークが肝となっており、そのため幾何学の理論を把握することが重要となります。しかも構えが一つで、防御の方法が2つであるため、その点では非常にシンプルな剣術です。
他の武術とは違い足を広げずに背筋を伸ばして直立し、剣を真っ直ぐ相手へ伸ばして構えます。他の剣術家から見ると棒立ちに構えているため、効果的な構えにあまり見えません。とはいえ素早く前へ踏み出す場合には、速度を出し易いです。しかも足を止めることなく常に動きながら戦うため、まるでダンスをしているようだと評されることもあります。
真っ直ぐ伸ばした県は相手を牽制する意図だけではなく、相手が踏み込む時に串刺しを狙うためのものでもあります。さらにスペイン流の剣は鍔がお椀上になっており、相手の突きを鍔で防ぐのに非常に適していると言えるでしょう。
外側から回り込んで相手が攻撃しようとしてきても、計算されたフットワークにより相手に対して剣が真っ直ぐに突き出されている状態が保たれているのであれば、こちらはリーチでは常に有利な環境を作ることが出来ます。
イギリスの有名剣士ジョージ・シルバーの評
出展:AI画伯を使用した自身の画像より引用
スペイン流剣術ではレイピアを用いて戦います。イギリスのジョージ・シルバーという有名な剣士はレイピアに非常に否定的な人物です。ジョージ・シルバーはブロードソードの名手であり、イギリスという国柄もあり非常に防御に重点を置いています。ちなみにジョージ・シルバーにご関心のある方はこちらの記事をご覧ください。
ジョージ・シルバーの言ではスペイン流剣術の対処の仕方は、剣さえ打ち払うことが出来れば相手を討つことが出来ると主張していました。しかしスペイン流剣術のフットワークとレイピアは盾の役目もするため容易に切り込むことは困難です。
スペイン流剣術を破る方法は先ほど述べてたように剣を交わして攻撃することと、もう一点は横移動などして回り込んで剣を交わして攻撃を加える2点だと言われています。ただスペイン流剣術はそのようなシーンも十分想定しているため、訓練を積んだ相手を倒すことは容易ではありません。
常に動くことで相手の隙を突き、それと同時相手に隙を作らせないように努めることがスペイン流剣術の神髄とも言えます。他のレイピアの戦い方は攻撃よりな傾向がありますが、スペイン流剣術では防御力が高いです。ジョージ・シルバーは防御面に重きを置いている剣士であるためか、嫌悪するレイピア剣術と言えどスペイン流剣術に関しては認めていました。
スペイン流剣術の現在
18世紀を迎えるとフランスの武器であるスモールソードが台頭し、レイピアは影を潜めました。そして19世紀にはスペイン流剣術を復興させる試みがありましが、再び返り咲くことは出来ませんでした。当時の決闘形式の戦闘では非常に強かったスペイン流剣術ですが、現在はスポーツを始め様々なシーンで存在感は無くなってしまったようです。
中世ではフランス系の剣士達の間では、円運動のフットワークを使用するスペイン人の戦い方は卑怯だと非難されていました。そして皮肉にも現代では、スポーツとして行われてるフェンシングに関してはフランス系の戦い方がベースとなり行われています。スペイン流剣術の栄枯盛衰は当時の国の流れと比例しているかのような印象を受けました。